ワイヤーカットの部品加工

今回、記載する加工依頼品は非常に小さく精密な加工の依頼です。

材質純チタン
サイズ(おおよそ)10㎜×5㎜×4㎜
最小公差+5㎛~0(㎛は1㎜の1000分の1の単位です)
依頼個数3個
リードタイム約1週間

◎依頼背景

弊社の近所にあるマシニング加工業者からの依頼です。
上記のように材質が純チタンのため、切削加工ではこのサイズのものをこの要求精度で加工することは難しいということで依頼がありました。


◎材料について

下記に純チタンの特性をいくつか挙げてみます。
・磁性が極めて弱い
・錆びない
・軽い
・強い(特にチタン合金)
・熱伝導率が低い

他にも人体にとって毒性がないなど特徴のある金属ではありますが、こういった特性が加工する際にネックになります。
例えば「熱伝導性が低い」という特性は、切削加工においては工具にて切削した際に発生する熱が逃げにくいということでもあります。
すると、加工材と工具に熱が蓄積されてしまい工具の摩擦が大きくなります。
また、純チタンの場合は柔らかく粘りのある金属なので、削りカスが工具に付着してしまい摩耗しやすいといった厄介な性質があります。


◎ワイヤーカット放電加工について

ワイヤーカット放電加工は、一般的なドリルやエンドミルを使った切削加工とは異なり、
細い金属製ワイヤー線に電気を通して意図的に放電現象を起こすことで加工を行う非接触加工です。

あまり一般的な加工法ではないため、先日テレビで紹介されたときは「電気カッター」と表現されていました。
イメージしやすい言葉ではありますが、切削加工とは区別していただきたいですね…

ワイヤーカット放電加工の場合、放電させるために被加工物とワイヤー線との間には一定の距離を取ります。(放電ギャップ)
この距離は電気エネルギーの強弱でも変わりますが、材質によっても大きく異なってきます。
特にアルミニウムは溶けやすいため補正は大きいです。

簡単に放電加工のサイクルを説明しますと、

  1. 絶縁状態の液中(主に水や油)に被加工物とワイヤー線が離れた状態でスタートします。
  2. 徐々に被加工物とワイヤー線を近づけていくと、あるところで放電現象が発生し火花が発生します。(絶縁破壊・火花放電)
  3. 被加工物側が高温となり溶けたころ、被加工物とワイヤー線の間に爆発現象が生じ、両極にクレーター上の凹凸が生じます。その際に、金属粉・ガス・イオン(総称してスラッジと呼びます)などが液体に流れ出ます。
  4. スラッジが液体の流れによって拡散すると、1の状態に戻り次の放電に移行します。(絶縁回復)

ワイヤーカット放電加工では1~4を繰り返し行うことで、細い金属線で少しずつ金属を切っていきます。
その加工の様子は糸鋸で木材を切る様子に似ています。

ワイヤーカット放電加工でも、荒加工・仕上げ加工があります。
荒加工の場合、電気エネルギーが大きいため加工スピードは出ますが、加工面が荒く少しこすると寸法が変わります。
仕上げ加工の場合、電気エネルギーが小さいため、溶かす量が多いと加工スピードがものすごく落ちます。
その代わり、加工面がきれいになり寸法精度も良く仕上がります。


弊社での対応方針

今回のような加工品の場合は、最初に放電ギャップを多くとり、荒加工を行います。
その後、条件を弱い条件に変えて、放電ギャップを少なくし、同じ経路をたどって仕上げていきます。

この純チタンという材質は弊社でも何度も加工しているわけではないため、この精度で加工するためにはサンプル加工を必要とします。
最大でも1センチにも満たない大きさであり、ワイヤー線は基本的には2次元的にしか動かないので、
この製品を加工するためには4工程に分けて一部ずつ加工していきます。


加工を終えて…

ワイヤーカット放電加工はプレス加工の際に必要となる「金型」の加工用機械としての利用が主流でしたが、
昨今は、プレス加工の主体が海外に移ったため金型の仕事は少なくなりました。
当社としては培った加工技術を微細な部品加工に役立てる方に事業の主体を置くようになってきました。

その際に一番難しいのは、加工する製品をどのようにして保持するかという点です。

ワイヤーカット放電加工機は寸法精度の再現性はいいのですが、切削加工に比べて加工時間が長いというデメリットがあげられます。
そのため、ある程度の形状を切削加工で行い、切削加工では難しい部分の加工をワイヤーカット放電加工で行うことが多いです。

ワイヤーカット放電加工機械は大きく、被加工物を置くテーブルもそれなりにしっかりとしてます。
テーブルと通電しなければ加工できないため通電性のある金属で製品を固定し、電気的な位置出しをしてから依頼されたところだけを加工します。
そのため、治具の作成・取付・位置出しの検討時間のほうが
加工時間よりもはるかに多くに時間を要し、その良し悪しによって製品の仕上がりに大きく影響します。

今回のように「こんなものはできますか??」との問い合わせに対して、今までの経験を生かしてトライする仕事が面白いです。

長文にもかかわらず、最後までお読みいただきありがとうございました。
今回のような加工依頼は大歓迎でございます。
皆様からの無理難題をお待ちしております。

お問い合わせはこちらから。

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