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ワイヤーカット放電加工のカット回数について

なぜ何度も同じ加工パスを行き来するのか

 さて、「ワイヤーカット放電加工の際に何回か往復させて加工します」というお話を耳にしたことがあるでしょうか?
切削加工などにおける加工条件は送り速度や切り込み量・刃物回転数などがありますが、
ワイヤーカット放電加工においても似たような考え方があり、荒加工と仕上げ加工を行う必要があります。
一般的な加工であれば1回目で狙い寸法より大きめの加工パスで粗加工を行い、2回目以降電気的な条件を弱くし、
最終条件で本来欲しい寸法に仕上げていくような流れになります。

いきなり仕上げ加工にしない理由

  いきなり仕上げ加工にしない大きな理由は、加工速度がとても遅くなってしまうことが挙げられます。
1回目の加工というのはワイヤー線の直径分の溝切りを行う必要があるため、
溶かさなければいけない金属量が2回目以降に比べると、とても多くなります。
2回目以降はすでに溝が掘り終えてあるため、本来の欲しい寸法に仕上げるために設定した切り込み量のみ溶かしていくだけでいいので必然的に溶かす量も少なくなります。
そのほかの理由としては、カット回数を重ねることで、ワイヤーカット放電加工に発生してしまう「タイコ」を予防することや
表面精度を改善させたいという理由も挙げられます。

実は難しい粗加工と仕上げ加工の関係

 唐突ですが、皆さんはサンドペーパーで金属を磨いたことがあるでしょうか?
おそらく、最初に番手の小さいものから行い、均一な表面になったら次の番手に変えることを繰り返したと思います。
その際、最後の方の番手にしたときになって、深い傷がまだ残っていて目立ってしまった経験はありませんか?
実は、ワイヤーカット放電加工においても似たようなことが起こり得ます。
1回目の粗加工で強い条件で加工した際の放電跡が仕上げ加工で取りきれずに、一部だけ凹んだ状態になっていることがあります。
もちろん、肉眼で見てわかるレベルではないですし、仕上げ加工をしてあらかた除去できているので穴の深さは数ミクロンの世界です。
しかし、こう言ったものが影響する可能性もあると思います。例えば、この穴が起因となってクラックが発生するなど…
弊社には2000倍まで拡大して観察が行えるマイクロスコープや操作型電子顕微鏡を社内に設置しておりますので
加工面を観察し、こう言ったことが発生していないかしっかりと確認をすることができます。